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人間科学研究所とは

これからの組織の人材教育のあり方

今、考える「コミュニケーション能力」について

コミュニケーション能力が高くなければ仕事にならない コミュニケーション能力はどうすれば向上するのか?  本当の危機管理とは?

コミュニケーション能力が高くないと仕事にならない

コミュニケーション能力があなたの仕事に役に立つ!なんていうノンキなことを言っている時代はもう終ったと、私は感じています。
言い換えれば「コミュニケーション能力が高くなければ仕事にもならない」という時代です。

例えば、お医者さん、歯医者さん、です。

かつては先生と言われる人は、もうそれだけで「敬意」をもって接してくれ、患者さんに詳しく説明するというよりは、一方的に診断を下すだけでも十分にやっていけた時代がありました。
しかし、今は、合意形成のために事前にきちんと説明をし、理解、納得してもらう必要があります。
これからは全くの素人に専門的な知識を分り易く説明する能力が求められます。

これはどんな専門職であっても同じです。
裁判官ですら、一般市民である「裁判員」と共にコミュニケーションを取りながら判決を下さなくてはならなくなったのです。

また、飲食店で学生のアルバイトを雇っていても、その接客でクレームがあれば「アルバイトですから」といった言い訳は通用せず訴訟にまでなってしまうような時代です。

そんな社会の状況にもかかわらず、あまりにもコミュニケーション能力の欠如した人が街中に溢れています。
ましてや「相手を気遣う」などといった高度なコミュニケーション能力を持ち合わせている人など1000人に1人いるかいないか、くらいの現状です。

ここまでなってくると逆に「高度なコミュニケーション能力」を持っている人は希少価値のある存在と言えます。

これだけ各分野で専門化された時代ですので、自らがその専門知識や技術を持っていなくても「専門家」と「技術者」をコーディネイトしてまったく違うビジネスを成功させていくことも可能です。

また、冷え切った職場に「潤滑油の存在」として入り込み、高度なコミュニケーション能力を伝染させていくことも可能です。
この社会のあらゆる仕事は人間対人間のコミュニケーションの上に成り立っています。

そういったことから、コミュニケーション能力は高くなくては仕事にならない時代がやってきている、と痛切に感じます。

コミュニケーション能力はどうすれば向上するのか?

コミュニケーション能力は一体どうすれば向上するのでしょうか?
私はこう考えます。
人間は幼児期に必要な愛情を両親あるいはしかるべき保護者に与えられれていればその体の中に元来備わったコミュニケーション能力はある、と思います。

ですので、コミュニケーション能力を向上させる「鍵」は

  • 訓練し繰り返す
  • 成功の実感を積み重ねる

この2点です。

私達は子供の頃から、人の中で生きています。
その中で、成長するにしたがって関る人間の数が増えてきます。
そして人とのコミュニケーション手段が広がり「なんとなく仲良くなってなんとなく遊ぶようになった」という自分以外の人との人間関係作りをしています。

そしてそのことが「楽しい」という成功の実感を自分の中で積み重ねていくことでコミュニケーション能力がどんどん伸びていくわけです。

つまり、人ときちんと関った=うまくいった「場数」によってコミュニケーション能力は育っていくのです。

しかし、その「場数」を踏む場そのものが現代の日本には決定的に不足しています

家庭での会話は少なく、地域での交流はなく、学校教育の中にはコミュニケーショントレーニングのプログラムすらありません。

これからはコミュニケーション能力は意識して育てていかなくてはならず、組織としてはコミュニケーションできる環境、そして風土作り築くことが必須となってきます。

本当の危機管理とは

「社外に対してのコミュニケーション能力」の必要性についてです。

例えば、最近はよく企業の不祥事でトップが記者会見で頭を下げて「謝る」ということがよくあります。

その時の「謝り方」の良し悪しで、その謝り方を間違えると大企業でもあっという間に潰れてしまいます。
私もテレビを見ていてトンチンカンな謝り方に思わず腰が抜けそうになることもあります。
それくらいお客様とじかに向き合わない、歪んだ構造の組織が増えているのです。
そんな歪んだ構造の組織なので、当然トップが公の場で完全に「場違い」な発言をしてしまい、消費者の反感を一気に買うことになります。

「上手な謝り方」などというものはありません。
「謝る」というシーンは、究極その人の人間性が全て現れてしまう瞬間です。
こういった場合、「真正面からそのことに向かい合う」という姿勢が必要です。
「責任逃れ」や「逃げていない」その姿勢を見て人ははじめて、「もう一度信用してみようかな」という気持ちになるものです。

また、これからはトップだけでなく、社員個人、そして末端の人間までの「謝り方」つまり、人ときちんと向き合うコミュニケーション能力が重要になってきています。
会社として業務の中でどうしてもお客様に「謝り」を入れなくてはいけないシーンはあります。小さいクレームから大きなものまでいろいろです。
しかし、その対応次第で、「さらに大きなクレーム」になるか「さらに大きな信頼を勝ち得るチャンス」となるかが分かれます。

かつては、日本の大企業と言われることころは、系列さえきちんと整備すれば直接面と向かってお客様に対面しなくてもなんとかうまくいくというシステムでした。

しかし、今は情報化社会なので、たった一言不適切な発言をしてしまったばかりに瞬時に影響がでてくるわけです。

さらに、今はインターネット社会ですので、消費者一人の怒りの感情が一気に広がる可能性だって多いにあるのです。

ですので組織に属する人間すべてに強い説明責任が要求されます。
それは簡単に言うと、
社員一人一人が、「自分が責任を取ります」というスタンスを持って仕事をする、ということです。

これは前述した「仕事観を教える」に通じますが、
「自分がやる」という強い自覚を持って仕事に取り組む、ということです。

そういった強い自覚が芽生えると、人は「きちんと人と向かい合う」ということを無意識にやってのけるようになります。
つまり「私は知らない」というスタンスから、「そのことから逃げない」というスタンスに変わります。

実際に責任を取るか取らないかは置いておいて、個人の気持ちとして、そこまでの「自覚」を持たせていなければ組織としては駄目ということです。